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「花見酒の経済」の勘違い 

最近になって,また新聞で「花見酒の経済」という文字を良く見るようになりました.この言葉は,朝日新聞の論説主幹だった笠 信太郎の『花見酒の経済』から使われるようになりました.当時の高度経済成長に疑問を投げかけるものとして用いられたのです.近年は,『バブル』に対する批判,つまり実態のない経済に浮かれる状況を批判するのに用いられているようです.

しかしこの『バブル』に対しての用い方は,間違い.経済学を学ぶまでもなく間違いです.まずは落語の「花見酒」をみてみましょう.

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■落語 花見酒
  ”酒が無くてなんの桜かな”と言われるように、花見には酒が付き物です。
 「向島に花を見に行ったら酒屋がない、だから我々二人が金を出し合って酒を売らないか」と言う事で酒を仕入れて売る事になった。倍儲かるから2両が4両、4両が8両になって、8両が ・・・・、両手でも数えられないほど儲かるという。

 借りのある酒屋だがそこで2両の酒を買った。一斗樽に仕込んだが底の方にわずか入った程度で、担いで出掛けた。腹が空きすぎて力が出ないと言って1貫だけ残して置いた。この1貫で芋でも買って力を付けて働く事にしたが、芋を買えば芋屋に儲けさせてしまう。だったら、無駄がないように我々の酒を買えば損が無く、倍儲かるよ。樽をそこに置いて、まず相手に1貫の金を払って一杯の酒を買って飲み出した。金を受け取った相棒も待ちきれずに、その一貫を相手に渡して一杯やった。イイ酒だと感心しながらやった。相手が美味そうに飲むので 、その1貫で交互にまた飲んだ。

 向島に着いて、酔った勢いで店開きをした。最初の客が付いたが、酒が無く売り切れていて断った。2両の金で仕入れているので、4両にはなっているはずで、そのお金で再び酒を仕入れて来る事にした。相棒に売上金を出さすと1貫しか無い。「2両で仕入れたのに1貫しか無いとはおかしいじゃないか」、「1貫出してお前が飲んで、俺が飲んで、またお前が飲んで、俺が飲んで・・・、で売り切れた」、「それなら、無駄が無くって良かったな」。

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というもの.
一見奇妙な取引に見えます.
しかし,これはバブルではありません.花見酒の経済では,実態がそこにあるからです.(バブル経済というのを「実態の無い経済」としておきます.)花見酒の二人は,自分達が持っている酒をある種の『自家消費』しているんです.つまり自分達がお互いに取引しているだけのことで,そこにはきちんと実態的な財と取引が存在しているんですね.

『自家消費』というのはGDPを測るときに,農家が自家消費する農産物について帰属計算をする際に使われます.農家は,自分達が食べる分をとっておいて,残りを市場に売ります.自分達が食べる分は,市場には出回らないものの,価値を持った財として存在はしているわけです.GDPでは,この自家消費の分を,市場価格を元に計算して計上します(これを帰属計算といいます).つまり,そこに実態的な財は存在するものの,自家消費などで市場を経由せずに消費されてしまう財について,きちんとその財の価値を計上することを帰属計算というわけです.

この「花見酒の経済」は,酒という実態がきちんとあり,バブルではない.そのため,バブルに対して「花見酒の経済」を持ち出しているのは,間違いだっていうことになるわけです.落語を見ていると,自分達の売り上げはまったく無いように見えますが,これは飽くまで金銭的に計算した場合の話.いわゆる満足度(経済学でいうところの効用)で測るならば,きちんと酒を飲んで消費しているわけですから,実態として効用があるんですね.



・ちなみにSNAの考え方を適用するとすれば,自家消費などと持ち出すまでも無いです.次のように考えることになるでしょう.

①もし酒を仕入れて,きちんと売っていたら,
『酒』は別の人の最終消費としてGDPに計上されます.

②落語のように,酒を自分達で飲んでしまっていたら,
『酒』がそのまま2人の最終消費としてGDPに計上される.

というだけのことですね.中間マージンをゼロとしておけば,どちらの取引もまったく同じ価値をもっているわけです.




・さらに,落語自体の問題としては,

二両で仕入れて(一貫だけ残してある),一貫で売ると倍の四両になり,儲けは二両.


です.落語の取引は,残してある一貫を使って,はじめに一杯のむ.売り上げは一貫.しかし次の人は,その売り上げを使って酒を買ってしまう.そして次もまた繰り返す.
そうすると,四両分の酒を飲めたことになる.
二両で仕入れて,四両の酒を飲んだのだから,儲けは二両でしょ.ただし売り上げ二両を使って,飲んでしまったので,一貫が残るのみということになります.

なんの問題もない.

一見面白い話も,よく考えれば,不思議でもなんでもない話です.新聞で論を述べるなら,もうすこしよく考えてから書いて欲しいものです.二重に勘違いしてしまうなんて,落語のオチにもなりませんよ.

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