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中国共産党の洗脳技術 

影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか
影響力の武器―なぜ、人は動かされるのかロバート・B・チャルディーニ 社会行動研究会

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大学生の文章能力は,明らかに落ちているように感じます.時には留学生の方が立派な日本語使うことすらあるくらい.また議論の能力のほかに,もう一つ良くないのが,メディアリテラシー.最近の大学では,こうした傾向に歯止めをかけようとしています.メディアリテラシーをつけることを目的として,ディベートの講義を持っているようです.なるほどディベートなら,モチベーションを保ったまま,資料を調べ上げ,論点をまとめたりということができる.つまりメディアリテラシーをつけながら,議論の能力を高めることができるわけです.

こうした議論能力やメディアリテラシーの低さは,国内ではあまり問題になることは少ないのかもしれない.先に書いたように,日本での議論は,その場の空気,雰囲気,感情,場合によっては恫喝によって決まる傾向が強いからです.周りの意見が同調してくれれば,どんどん意見を述べ始めるが,いざ同調の雰囲気が無くなると,すぐに意見を引っ込めてしまう.こうして空気によって,議論の方向性がきまり,空気に反することが許されないようなことが言われることがあります.議論は空気でするものではない.もちろんコミュニケーションに空気を利用することは大事です.しかし,この空気とは社会心理学でいうところの,社会的証明に近い.

ある状況で,何を信じ,どういう行動をすべきかを決定する方法の一つは,周りの人間がどうしているかをみることであり,これを上の本によれば,社会的証明といいます.これは実はおどろくほど強力な心理学的な影響力を持つ.これを過小評価してはいけない.以下,「影響力の武器」に基づいて,いくつかのケースを見てみることします.
 卑近な例からら挙げてみます.道端で一人で上を向いてみる.たぶん誰も気にしない.しかし,おなじことを10人でやってみると,結果は大きく異なってくる.通りかかる人は,必ず上を見るはずです.これはもう条件反射に近い.
 もう一つ怖い例を.高速道路で,先頭に障害物が無いにも関わらす,衝突事故がおきるケースがあります.この原因がわかっています.前に走る2台の車が同時にウィンカを出して車線変更をすると,後続する車も車線変更をするのだそうです.これは前の数台が車線変更したという事実から,それより先に障害物があるかもしれないという,経験則が勝手に体を動かしてしまうもの.これが連鎖してしまうことで,一つの車線に車が集中し,衝突事故を起こしてしまう.

このように本質とは関係の無いことで,結果が生じてしまう.
もっとも怖いの集団的無知といわれる状況.これは皆がお互いに他の人の行動を根拠にして行動するような状態を言います.これも例がある.道端に人が倒れていても,たいてい声をかける人はいない.酔って倒れているのか?寝ているだけなのか?それとも本当に危険な状態なのか?これを判断できないからです.そして皆傍観してしまう.その状況がまた皆の傍観を生む.こうした集団的無知は周りに人がいればいるほど起こりやすいのだそうです.
こうした状況を解決できるのは,その集団的無知の連鎖に影響されなかったまったく外部の人間である.上の例の場合には,それまでそこにいなかった人間が,初めて声をかけることになる.

社会的証明は空気による議論と同じとはいえないが,近い現象といえます.こうした社会的証明を利用した,悪徳商法があります.つまりこのような心理的作用を悪用することができてしまうわけです.同様にして,空気による議論も非常に危険です.多少こうしたことに慣れた人間ならば,簡単にそれを悪用することができてしまうからです.

そのほか恫喝なども,ときには効果を持つ.しかし本当に議論になれた人間には,恫喝なども慣れたもの.これも効果を持たなくなる.もちろん恐喝なら効果を持つかもしれないが,それは犯罪です.

さて,話をタイトルのトピックに戻します.それは中国共産党はこうした心理現象に対して,非常によく理解しているということです.それを知っていないと,単に相手の戦略に乗せられて終わってしまうでしょう.有名なのは,その洗脳技術能力の高さです.朝鮮戦争の間,多くのアメリカ兵の捕虜が,中国共産党が管理する捕虜収容所に収容されていました.ここで行われた洗脳政策は,痛みを伴い強制的に洗脳するような安易なものではありません.痛みを伴った洗脳政策は,痛みを理由に洗脳されたのだと,洗脳の「言い訳」を与えてしまいます.つまり自発的に自らの意見を変えたわけではないということになってしまいます.もっとも効果的な洗脳は,あたかも自発的に意見を変えたようにすることなのです.この場合,本人は洗脳されたことにすら気が付いていないでしょう.
中国共産党が行った洗脳政策は計画的かつ洗練された心理攻撃,「寛容政策」でした.以下『影響力の武器』に基づいて書きます.

どうしたら肉体的な暴力を伴わず,捕虜たちから軍事情報を聞き出し,捕虜仲間の情報を密告させ,公然と母国を非難させることができるでしょうか?中国が行ったことは,以下のようなものです.

「捕虜たちは,非常に穏やかな非アメリカ的,共産主義的な意見を書くことを求められた.そしてサインをさせられる.またアメリカの問題点なども書き,その理由を述べさせられたりもすることになった.」

こうした小さな要求からはじめたのです.この程度なら,洗脳されないだろうと,書く捕虜たち.しかし書くという行為には,ある効果があります.ひとつは社会心理学のコミットメントというもの.ほとんどの人には,自分の言葉,信念,態度,行為を一貫したものにしたい,あるいは,他の人にそう見られたいという要求があります.書いた結果について,一貫性を保ちたいという条件反射的な心理作用が生じてくる.また自分の文字で書いたものが,記録としてどんどんたまっていく.決して極端な要求ではなく,非常に穏やかなものから少しずつはじめていく.

こうした承諾誘導のテクニックは,「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」と呼ばれている.1966年のジョナサン・フリードマンとスコット・フレイザーが面白い実験をしています.ある街で,はじめに「安全運転」を呼びかける小さなステッカーを家に貼ってもらうようにまわる.ここで小さなコミットメントをしている.そしてその2週間後,安全運転を呼びかける,大きな看板をその家の玄関先につけてくれとまわる.なんと76%もの人が同意したのだそうです.なにもしていない場合には17%.繰り返し行われた実験ではないので,統計的有意性を議論できてはいないと思いますが,おそらくきちんと分析しても十分に有意な結果になるでしょう.

このようにほんのちょっとしたことでも,承諾書や請願書に署名することは非常に危険なことなのです.

中国人が理解していたことは,「自分自身がどんな人間であるかを,自分の行動から判断する」というものでした.自分の行動こそが,自分の信念や価値や態度についての第一の情報源であって,その行動をうまく制御することで,無理なく教化を行うことができたのです.

ポイントは「害の無い譲歩」であることです.この譲歩を行うことで,特に害は無いと思わせるようなこと.こういう些細なことを繰り返す.特に,口頭ではなく,文字に書かせることで,記憶にも記録にも残る.自分が確かにしたことと,一貫性を保つように自己イメージが変わってしまうのです.

また人には,書かれた意見は,それを書いた人の真の態度を反映していると考える自然な傾向があります.この書いたものを見られれば,周りの人からもそういう評価を受けてしまうだろうと考え続けることにもなる.

つまり,行動を含むコミットメントをすることは,自分の内側からも,また外側からも,自己イメージをコミットメントに合わせようする圧力がかかってくるのです.

さらにもう一つ,効果的なテクニックがあります.収容所で定期に政治に関するエッセイのコンテストがあったそうです.そこでのコンテストの商品は非常に些細なもの(タバコ数本程度)だったそうです.それでも捕虜にとっては魅力のあるもの.そのために共産主義を支持するようなエッセイを書いてしまう.まあ,これ自体はありがちです.
ポイントは,商品がとるにたらないものであったことです.もし商品が豪華であれば,賞品目当てにエッセイを書いたんだという言い訳を与えてしまう.つまり自らの意思に基づかずに,行動したに過ぎないという逃げ道を残してしまいます.しかしタバコ数本のような,とるに足らない商品であった場合,そういった逃げ道が無い.つまり共産主義を支持するようなエッセイはあたかも自らの意思で書いたような形になってしまう.見事な戦略です.


以上見てきましたように,中国共産党の洗脳技術は見事なものだったことが知られており,いくつかの実験によって,その効果が確かめられています.

心理的作用は,日常の社会生活を行ううえで,非常に役立つもので,通常はメリットばかりです.何かの新しい現象に遭遇したときにも,こうした行動原理を用いることで,いちいち立ち止まって考えることなく,条件反射的に行動して,たいていの場合はうまくいってしまいます.

しかし,ひとたび社会心理をよく知る人間がそれを悪用しようとするとき,デメリットがメリットに取って代わる.とても危険なのです.きちんと自分の頭で考える能力や,自分で情報を収集する能力,そして一度立ち止まって冷静に分析しなおす能力が必要なのです.これは議論の時のみならず,判断が必要なあらゆる状況で大事なことだと思います.

議論の能力の問題とは,ちょっと話がそれてしまいました.議論の本質とは違うところで,議論の方向性がそれてしまうこと.これが一番恐ろしいことです.それを避けるためには,こうした社会心理の知識も必要だということです.かりにこの社会心理に関する知識があっても,論理性が欠如していれば,そもそも議論にならないのは,言うまでもありません.また議論のテクニックといった小手先のものも,それを学んでいないよりも,ずっと効果を持ちます.こうした論理性や議論に慣れるということは,また別の話題として書くことにしましょう.

参考文献
影響力の武器―なぜ,人は動かされるのか?
ロバート・B・チャルディーニ

これ最近,新しい版が翻訳されましたね.いくつか章がついかされたようです.最近話題の"Hacking the Mind"をプレゼンしたMike Murrayも紹介していたのがこの"Influence"です.
ちなみに,"Hacking the Mind"については,以下のようなものですが,検索してみてくださいね.

Hacking the Mind: Hypnosis, NLP, and Shellcode
Mike Murray

The similarities between the methods used to exploit a computer network and the language patterns involved in hypnosis and neuro linguistic programming (NLP) are striking. In this talk, nCircle's director of vulnerability research Mike Murray (who is also a Master NLP practitioner and certified clinical hypnotherapist) will demonstrate the use of hypnotic language patterns, metaphors, and other patterns of influence, as well as showing how a good hypnotist structures inductions in a similar way to the methods of a skilled computer hacker. Hypnotic analogues to buffer overflows, shellcode, and other types of computer attacks will be demonstrated, leaving the audience with a deeper appreciation for language patterns and their effect on the human mind.

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